2018年08月12日号 01面

モンゴルの〝マンホール・チルドレン〟が安心して暮らすことができ、将来の自立を目指した生活訓練を受けられるホームを、モンゴルの教会を通して作るプロジェクト「モンゴルキッズの家 マンホールチルドレンを支える会」が設立され、本格的に始動。そのプロジェクト発足記念礼拝が7月27日、東京・千代田区神田駿河台のお茶の水クリスチャン・センター4階東京プレヤーセンターで開かれた。発起人は、同プロジェクト代表の高見澤栄子さん(トーチ・トリニティ神学校宣教学教授)。NHKの番組でモンゴルのマンホールに住む3人の子どもを見て、「いつかこの子たちを助けることができるように」と祈り始めた高見澤さんは、「その祈りが今、動き始めた」と語る。【中田 朗】IMG_3845

気温がマイナス30度まで下がる長い冬の間、モンゴルのホームレスの子どもたちは、温水パイプの通るマンホールの中で暖を取りながら生活をする。そんな子どもたちのことを「マンホール・チルドレン」と呼ぶ。その数をモンゴル政府は正式に発表していないが、「少なくとも約100人のデータは集めてあります」と高見澤さんは言う。
最初にマンホール・チルドレンのことを知ったのは、1998年に放映されたNHKのドキュメンタリー番組を見たことだった。番組の情報では当時、約4千人の子どもたちがマンホールで暮らしていたという。番組では、その中のボルド、ダシャ、オユナの3人に焦点を当てて、その生活を追っていた。「誰かからもらったスープ、パンを3人で分け合っていた。10歳そこそこの子どもたちが、光も水もないマンホールの中で助け合って暮らしている姿に心が痛みました」。高見澤さんは、その3人の名前を心に刻み祈り始めた。だが、当時は神学校を終えたばかり。仕事もしていない状況で、「今は何もできないけれど、いつか時がきたら私に何かさせてください」と祈っていた。
それから19年がたった昨年11月、続編の「10年後のマンホールチルドレン」(08年放映)がネットにアップされているのを発見した。見ていたら、ボルドはアルコール依存症でひどい暴力を振るう人になっていた。ボルドと結婚していたオユナには顔に傷があり、いつも自殺願望をもつ人になっていた。ダシャはゴミ集めの仕事をしながら、アパートの地下室に家族8人で暮らすという厳しい状況が伝えられていた。「10年間が彼らをこんなにしてしまった。私は19年間ほったらかしのままでした」と、高見澤さんは悔やんだ。IMG_3913
「何かしないとダメだ」と思い立ち、翌日、神学校で学んでいるモンゴルの神学生ガナさんに話を聞いてみた。その神学生はこう答えた。「僕の教会に一人、昔アルコール依存症だった人がいる。テレビに出演したとも言っている。名前はボルドと言うんです」
「ボルド」という名前に、高見澤さんは驚いた。早速、彼の写真を送ってもらうと、正真正銘の「ボルド」だった。彼は、その教会が行うアルコール依存症の人のための回復プログラムを通して、最初に救われた人だった。
今年2月、高見澤さんはモンゴルに渡り、ボルドさんと初対面。「彼は、20年間会わなかった親に会うみたいだと言った。私は20年間捨てていた子どもに会ったみたいな感じでした」。彼はタイヤの修理工場で働いていた。アルコールから完全に解放され、教会にも熱心に通っていた。
オユナとダシャの消息も分かった。オユナは故郷に戻った後、自らいのちを絶っていた。ダシャはマンホールから出て、ゲル(モンゴルの移動式住居)に妻と子どもと一緒に暮らしていた。
高見澤さんは、ボルドさんの案内で、ダシャさんに会いに行った。クリスチャンではないダシャさんに、高見澤さんは神様から示された2つのメッセージを伝えた。「ダシャはお父さんに見捨てられた。でももう一人、天のお父様がいる。このお父様は決してあなたを見捨てない」、「世界中、誰もあなたのことを気にかけていないと思っているかもしれない。でも、私は20年前にダシャの映像を見てから、ダシャの名前が心に刻まれていた。2番目の映像を見てからは、日本のお友達に会うたびにあなたのお話をして『ダシャのために祈ってね』とお願いしてきた。私の携帯には、ダシャのために祈りますと言ってくれた80人の人の写真があります」DSC_0039
この訪問をきっかけに、ダシャさんも教会に通い始め、今、教会でアルファベットの勉強をしている。
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同プロジェクトでは、現地教会と協力して、こども8人が住めるグループホーム「モンゴルキッズホーム」の建設を計画している。目標はホーム4つを建設すること。それには3千数百万かかる。しかし、高見澤さんは、「千人が1年に1万円献金すれば1千万、3年間で3千万になる」とし、千人による祈りの輪と献金者を募る「Dream Together 1000」を推進している。第一期は600万円で、2018〜19年の間にグループホーム1号を建設したいと願う。並行し、子どもたちの育児、教育に関わるスタッフやボランティアの育成もしていきたいという。
同プロジェクトでは、祈る人、広める人、募金する人、ボランティアする人など、様々なサポーターを募集している。
詳細はURL https://mongoliakidshome.wixsite.com/home で。連絡先はEメールeikotakami@hotmail.com(高見澤)